CINEMA草紙

ブラジル、アルゼンチン、メキシコ、キューバ等々、中南米カリブのラテン映画・音楽・カルチャーを紹介するニッチなブログです!

911と「マチュカ」  

9月11日は、全世界が忘れることのできない同時多発テロの日だが、もう一つ、南米とくにチリ国民にとって「9月11日」は特別な1日である。
軍が大統領を暗殺し、長い暗黒の軍事政権時代が始まったのが、1973年9月11日だったのだ。

そして、2007年の9月11日、私は、ブラジルの深夜のTVで、チリ映画「マチュカ」を鑑賞した。

舞台は、社会主義政権下にあった1973年のサンチアゴ。
格差是正制度によって、富裕層が多く通う教会の学校に、貧民街で暮らす子供たちが入学してきた。揃いの制服や水着を買えない子供たちは、教室内で浮いた存在だったが、その中の一人マチュカは、いじめられっ子だったゴンザロと親しくなる。
二人は、お互いの家を行き来するようになるが、それぞれ、自分とまったく違った生活に驚きを隠せない。
ゴンザロとマチュカ、そしてマチュカの隣人シルバナの3人は、世の中の不穏な動きに戸惑いながらも、交流を深めていく。

一方、大人たちは、自分たちの生活を守りたい富裕層と、改革推進を望む労働者階級との間で対立が激化。
保守的なゴンザロの母がデモで遭遇したマチュカたちに罵声を浴びせたことをきっかけに、ゴンザロとマチュカたちとの間に微妙な溝が生まれてしまう。

そして、9月11日、軍がチリ政府を掌握。

まもなく激しい社会主義派狩りがはじまり、ゴンザロたちが通う教会の牧師も更迭されてしまう。
マチュカたちの身を案じたゴンザロは、自転車で貧民街へ向かうが…。

日本人にとって、チリという国はあまりにも遠すぎる。
ましてや1970年代に何が起こっていたのかなんて、ほとんど知られていないだろう。
「マチュカ」というタイトルと、子供の姿が写ったスチール写真を見ただけでは、子供たちの友情を描いたほのぼのとした人間ドラマ、と思うかもしれない。

もちろん、子供たちの心温まる交流も描いているし、「小さな恋のメロディ」のようなかわいい初恋物語も存在する。
ゴンザロの姉のパーティーで酒を飲んで酔っ払ったり、3人が無邪気に缶ミルクを舐めあったり…。貧乏とか金持ちとかは関係なく、普通の子供が経験する、ちょっと大人っぽい遊びを楽しむシーンは、とてもほのぼのしていて温かい。
ただ、その3人の子供の関係がとてもピュアなだけに、周りの環境である大人たちの対立や怒りの激しさが、際立って映ってくる。

富む者と貧しい者の格差は、ここサンパウロでも日常的に目にするし、南米の国々の長い歴史的事情もあるので、どうのこうの言うつもりはない。ただ、子供の生き生きした目が、絶望の目に変わる社会は、やはり見ていてとても辛い。

支配階級にどっぷりつかった母親の行動をだまって見つめるゴンザロ。
デモの中、戸惑いながらも旗を配るゴンザロ。
そして、衝撃の瞬間を凝視するゴンザロ。

いじめられっ子で、いつもビクビクおびえた表情だったゴンザロが、マチュカと友達になることで、生き生きとして子供らしい表情に変わり、そして、衝撃のシーンを目にしたあとは、一転して絶望の目と変わっていく…。

彼の表情の変遷に注目です。

日本では、14日から始まる「スペイン・ラテンアメリカ映画祭
で上映されるとのこと。東京&大阪近郊にお住まいの方、必見です!

マチュカ ★★★
アンドレス・ウード監督、マティアス・ケール、アリエル・マテルナ、マヌエラ・マルテーリ出演

もう一言;
アディダスの靴、コンデンスミルク、ぼっとんトイレなど、貧富の差を象徴する小道具の使い方もうまい。テイストは違うが「天国の口、終わりの楽園」「蝶の舌」といったラテン映画を彷彿とさせるものあり。
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Posted on 2007/09/13 Thu. 12:57 [edit]

category: ラテン映画

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