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CINEMA草紙

ブラジル、アルゼンチン、メキシコ、キューバ等々、中南米カリブのラテン映画・音楽・カルチャーを紹介するニッチなブログです!

封印された日系人の“汚点”に迫ったブラジル映画『汚れた心 Corações Sujos』レビュー  

☆☆ついに日本公開されたブラジル映画『汚れた心 Corações Sujos』。
長い間封印されてきた日系移民の“汚点”を、非日系ブラジル人作家フェルナンド・モライスが小説にし、非日系ブラジル人監督が映画にした。
演じるのは、日本人と日系人のトップ俳優たち。一昔前では考えられなかったコラボである。
この映画は、世界中の情報がネットで即、伝えられる現代では起こり得なかった、悲しい歴史の一事件を描いている。

☆舞台は太平洋戦争終戦直後のブラジル日系移民社会。
遠く離れた祖国の状況を案ずる人々は、ブラジル政府から出された日本敗戦の知らせに耳を傾けようとしない。
「デマだ!」「日本は負けない」と信じる“勝ち組”の人々は、過激な思想に陥っていく。写真館を営むタカハシは、勝ち組のリーダー、ワタナベに命じられ、現実を受け止めてブラジル社会に溶け込もうとしている“負け組”の青木を粛清しに向かう。

なんとも悲しい歴史である。
遠いブラジルに渡り、仲間と協力しながら小さなコミュニティを築いてきた日本人同士が、敗戦をきっかけに血なまぐさい殺し合いを始めた事件(臣道聯盟事件)は、日系社会では長い間封印されてきた。
もちろん、ブラジルに行くまでこの事件についてはまったく知らなかったし、日系人の知り合いからも、詳しい話はきくことはなかった。
日本人としてのプライドを今でも持ち続けている一世の人たちにとっては、日系人社会の“汚点”を自ら語りたくはないのも当然だろう。

映画は、勝ち組の刺客となった男を中心に描かれている。妻を愛し、近所の子供にも慕われている心やさしい男が、日本への歪んだ忠誠心にのめり込んでいく様が、痛々しいぐらいリアルだ。
勝ち組のリーダーであるワタナベの過激な思想と、彼に洗脳されていく若者たちは、連合赤軍やオウムとなんら変わりはない。
“国賊!”と罵る姿と、連合赤軍の“総括します!”がだぶって見えてゾッとした。

一部の暴徒のテロ行為、と片づけてしまうのは簡単だが、天皇=神という戦前教育を受けた人々にとって、天皇の「人間宣言」や日本降伏のニュースは信じがたいことだったろうし、遠い祖国を思って頑張ってきた彼らの生きる支えでもあっただろうから、勝ち組にも同情の余地はある。
奥田瑛二が演じた扇動者ワタナベと、彼の思想にがんじがらめにされていく純粋なタカハシ。描き方は多少、ステレオタイプではあるのだが、二人の関係性が変化していく様が丁寧に描かれていて好感が持てた。

外国人が小説や映画で描く“ニッポン、ニッポン人(Japão,Japones)”というのは、日本人から見ると不自然に感じるものが多いのだが、この映画は、ほぼリアルな日本人像だったので、それほど違和感なく感情移入することができた。
役者が日本のトップ俳優、というのも大きいだろうが、日系人のプライドを傷つけることなく、勝ち組、負け組、そして否応なしに巻き込まれていく家族の苦悩まで、真摯に描いてくれたアモリン監督にはお礼を言いたい。

21世紀になった今でも、古風で保守的なニッポンを引きずっている日系人社会を、「面倒臭いなあ。日本の田舎より閉鎖的だわ…」と思ったこともあったのだが、よその国で日本人としての誇りを捨てずに生き抜くためには、日本人よりも日本人らしく、自分を律しながら生きざるを得なかったのかもしれない。
日本に戻り、ブラジルの日系人社会を俯瞰できるようになってはじめて、彼らの生き方に敬意を表せるようになった。

(参考:原作者のフェルナンド・モライスのインタビュー

汚れた心 Corações Sujos
ヴィセンチ・アモリン監督、伊原剛志、常盤貴子、菅田俊、余貴美子、大島葉子、エドゥアルド・モスコヴィス、奥田瑛二出演
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Posted on 2012/07/28 Sat. 10:00 [edit]

category: 映画レビュー

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