CINEMA草紙

ブラジル、アルゼンチン、メキシコ、キューバ等々、中南米カリブのラテン映画・音楽・カルチャーを紹介するニッチなブログです!

『アンダーグラウンド』リバイバル上映で、15年ぶりに大興奮!映画史に残る傑作です!!  

☆☆10月1日映画の日、クストリッツア監督の傑作『アンダーグラウンド』を15年ぶりにスクリーンで拝むため、喜び勇んで渋谷へ。
テレビドラマの映画版が人気の今日この頃、クストリッツア映画に反応するのはごく一部のマニアックな映画ファンだけだろう、と、高をくくっていたのだが、劇場入口は黒山の人だかり!
3時間近い大作なのに「立ち見でもいいです!」と訴える頼もしい青年までいる。
15年前からのクストリッツア狂としては、感涙ものの、うれしい誤算である。

☆舞台は、ナチスに侵略された1941年のユーゴ王国。盗人仲間のクロを誘ってパルチザンに参加したマルコは、爆撃から逃れるため、動物を愛する弟や、身重のクロの妻らを地下室に誘導する。
一方、女優ナタリアの奪い合いで、ナチの将校から目の敵にされていたクロは、逮捕され厳しい拷問を受ける。瀕死のクロは、マルコによって地下室に匿われるが、以後、マルコは、地下室の時計の針を遅らせ、“戦争は続いている”と偽って、20年もの間、彼らを地下室に閉じ込める。さらにマルコは、クロの愛人ナタリアを寝取り、チトーの参謀の座を得、一人私腹を肥やしていく。

ナチ支配から、チトーの独裁を経て、ボスニア紛争まで、バルカン半島の激動の歴史を、マルコとクロという二人の男を軸に壮大なスケールで描いた奇想天外な物語である。
圧倒的な表現力で、観客を歴史の渦に巻き込み、皮肉たっぷりの独特のユーモアで心ゆくまで楽しませてくれる。
15年前に見たときは、策士マルコのずる賢さに、怒りさえ覚えたのだが、今回は、彼のクロに対するコンプレックスも感じとることができ、マルコに同情を覚えたほど。
力あるものになびく悪女ナタリアも、首絞めてやりたいほど嫌な女ではあるのだが、最終的には、罪悪感から逃れられずに自滅していく姿が不憫に思えた。
見る側も時がたつと変化するもの。
そこで新たな発見ができる作品こそが、歴史に残る名作と言えるのかもしれない。

この物語の悪者は、弱いものを都合のいいように振り回す、国家権力そのもの。
テーマは反戦、反権力ではあるものの、そこはクストリッツアなので、バリバリ硬派な社会派作品ではもちろんない。
個性豊かな登場人物は、ハチャメチャだけど、憎めないし、いたるところに笑いが散りばめられているのだ。

たとえば、この映画の英雄クロのプロフィールをかいつまんで紹介すると…

豪放磊落で、風貌はフィデル・カストロ風?
身重の妻のほかに、女優の愛人あり。
元電気職人で、ときどき盗人。パルチザンに参加し共産党員になる。
ナチから電気ショックの拷問を受けるが、感電免疫があって?見事生還。
目をパッチリ開いたまま眠る習慣あり。
地下で育った息子とともに、20年ぶりに地上へ。
浦島タロー状態のクロは、憎きナチの将校を見つけ、復讐を果たす(実はそっくりな俳優)。
姿を消した最愛の息子を探し、再び戦場へ…。

というように、キャラも遍歴もこってりの濃ーい人物。
クロだけでなく、他の脇役すべてに愛きょうがあり、どこか抜けているんだけど、みんなが真剣そのものなので親しみがわく。

その他、爆撃を受け騒然となる動物たちの様子や、時代の目撃者となるチンパンジーの表情など、お見事!の演技指導(?)である。
さらに、軽快なバルカン音楽の使い方、笑いを誘う小ネタ等々、本筋とは違った細部にも、様々な仕掛けが施されているので、何度見ても楽しむことができるのだ。
スケールの大きさと、細部へのこだわり、両方を併せ持ったクロサワ映画に匹敵する大作『アンダーグラウンド』。ぜひスクリーンでご覧下さい!

大好評につき、渋谷シアターNでは、10月28日まで上映延長。11月には、横浜ジャック&ベティでも上映します!

アンダーグラウンド UNDERGROUND
エミール・クストリッツァ監督,ミキ・マノイロヴィッチ,ミリャナ・ヤコヴィッチ,ラザル・リストフスキー,スラヴコ・スティマツ出演


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Posted on 2011/10/12 Wed. 11:28 [edit]

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