CINEMA草紙
ブラジル、アルゼンチン、メキシコ、キューバ等々、中南米カリブのラテン映画・音楽・カルチャーを紹介するニッチなブログです!
「ウッドストックがやってくる」レビューをUPしました! 
☆1969年夏。田舎町ホワイトレイクでさびれたモーテルを営む母は、息子エリオットと共に銀行へ出向くが、借金の返済延期を断られてしまう。町の役員をやっているエリオットは、ロックの祭典ウッドストックの開催場所が見つからない、というニュースを知り、広大な土地のある我が町に誘致しようと思い付く。
時代を代表するロックの祭典ウッドストックの裏話、と聞いただけでワクワクして見始めたのだが、いい意味で期待を裏切ってくれた上質な青春&家族の物語に仕上がっていた。
真面目な青年エリオットは、母親の生きがいである実家のホテルを立て直すため、そしてさびれた田舎町を活性化させるため、ウッドストック誘致を思いつく。だが、保守的な町の人々はエリオットを冷たい目で見、金のことしか頭にない母親もいろいろと文句をつけてくる。そんなみんなのわがままに戸惑いながらもエリオットは世界中が注目するロックの祭典の波に飲まれていく…。
「ロックフェスをおらが町によんで町おこし!」といえば、故郷の茨城で10年続いている「ロックイン・ジャパン in ひたちなか」。ビーチそばの海浜公園で毎年行われているロックの祭典なのだが、ここは普段はだだっ広いだけのタイクツな公園。そばにある阿字ケ浦ビーチも、小さくてダサくて面白味にかける。
苗場や湘南といったお洒落なイメージがあるリゾートとは違い、いわゆる閑古鳥が鳴いている保守的な田舎町でロックフェスなんて、初めは地元民もさぞかし驚いたことだろう。ウッドストックのように、「なーんで、そんなおったまげたことやるんダッペー」という反対意見も当然あったはず。
渋谷陽一御大は、おそらくウッドストックを多分に意識して、この冴えないビーチを選んだのだろうが、それが功を奏し、見事にひたちなか市の町おこしに貢献して下さった(おかげで私も毎年地元でロックフェスを楽しんでおります)。
話はそれてしまったが、映画を見ながら我が故郷のロックフェスを思い出し、始まりはこんなだったのかなあ、なーんて想像してしみじみ…。
「ロックイン・ジャパン」はロックが偏見を持たれない現代の祭りだが、ウッドストックは、ロック=不良がやるもの、と思われていた時代の話である。回りの大人たちの反感は今とは比べられないほどだったに違いない。
この時代を扱った映画の定番といえば、ベトナム戦争か学生運動かヒッピー。でも、実際にはエリオットのように真面目でいけてない素朴な青年も大勢いただろうし、そういった若者たちは、周りの盛り上がりを内心うらやましく思いながらも、殻をやぶれずにいたのだろう。
この映画には、ステージ上のジャニスやジミヘンの姿はまったく出てこない。ウッドストックに集まった若者たちが薬を飲んでトリップしたり、泥だらけになったり、沼で裸で泳いだり…。そんな姿をエリオットの目を通して追っていく。
途中からすっかりエリオットに感情移入し、ウッドストックの開放的な雰囲気を謳歌する若者たちに乗せられ、自分もその場にいるようなトリップ気分に…。
古いタイプの両親との関係や、ゲイであることの悩みなど、エリオットはいろいろ抱える問題も多いのだが、このイベントをきっかけに、一歩を踏み出そうとする。
祭りの後、山のようなゴミをバックに、すがすがしそうなエリオットの姿は印象的で、彼の旅立ちに拍手を送りたくなった。
この映画は若者中心の映画ではあるのだが、両親の姿もしっかりと描かれている。
ロシア系ユダヤ人の母は、徹底した金の亡者。ホテルの客にもケチなことばかりいい、融資をしぶる銀行員の前で悪態をつく。一方、父親は生きがいをなくし、生きた屍状態。そんな二人がウッドストックをきっかけに少しだけ変わっていく(祭りが終われば、母親はまた業つくばりに戻るのでしょうが)。
母を演じたのは「ベラ・ドレイク」で怪演したイメルダ・スタウントンなのだが、これがまた上手い!イギリス版市原悦子の体当たり演技は必見です。
また、脇役としてデカイ女装の用心棒(リーヴ・シュレイバー)も登場するのだが、彼のちょっとした一言もピリリときいて、いいスパイスとなっている。「ガープの世界」でジョン・リスゴーが演じたオカマを彷彿とさせる存在感!(女装といえば、ミッツや松子が今、流行ってますが)
そしてそして、ウッドストックのプロデューサーを演じたジョナサン・グロフ(要チェックの新人!)もキラキラ光ってて美しかった~。
久々に心が晴れ晴れする名作で、この映画を抱きしめて帰りたくなった。
ウッドストックを舞台にはしてはいるが、アン・リー監督の初期作品「推手」「恋人たちの食卓」路線のハートウォーミングな作品でした。
最後にもう一言:この映画の後でも先でもいいので、ドキュメンタリー映画「ウッドストック」を見ると、よりこの時代を体感できるはず。私も今から、昔録画したビデオをひっぱりだしてみるつもりです^^!
ウッドストックがやってくる!TAKING WOODSTOCK
アン・リー監督、ディミトリ・マーティン、ダン・フォグラー、ヘンリー・グッドマン、ジョナサン・グロフ、ユージン・レヴィ、リーヴ・シュレイバー、イメルダ・スタウントン出演
時代を代表するロックの祭典ウッドストックの裏話、と聞いただけでワクワクして見始めたのだが、いい意味で期待を裏切ってくれた上質な青春&家族の物語に仕上がっていた。
真面目な青年エリオットは、母親の生きがいである実家のホテルを立て直すため、そしてさびれた田舎町を活性化させるため、ウッドストック誘致を思いつく。だが、保守的な町の人々はエリオットを冷たい目で見、金のことしか頭にない母親もいろいろと文句をつけてくる。そんなみんなのわがままに戸惑いながらもエリオットは世界中が注目するロックの祭典の波に飲まれていく…。
「ロックフェスをおらが町によんで町おこし!」といえば、故郷の茨城で10年続いている「ロックイン・ジャパン in ひたちなか」。ビーチそばの海浜公園で毎年行われているロックの祭典なのだが、ここは普段はだだっ広いだけのタイクツな公園。そばにある阿字ケ浦ビーチも、小さくてダサくて面白味にかける。
苗場や湘南といったお洒落なイメージがあるリゾートとは違い、いわゆる閑古鳥が鳴いている保守的な田舎町でロックフェスなんて、初めは地元民もさぞかし驚いたことだろう。ウッドストックのように、「なーんで、そんなおったまげたことやるんダッペー」という反対意見も当然あったはず。
渋谷陽一御大は、おそらくウッドストックを多分に意識して、この冴えないビーチを選んだのだろうが、それが功を奏し、見事にひたちなか市の町おこしに貢献して下さった(おかげで私も毎年地元でロックフェスを楽しんでおります)。
話はそれてしまったが、映画を見ながら我が故郷のロックフェスを思い出し、始まりはこんなだったのかなあ、なーんて想像してしみじみ…。
「ロックイン・ジャパン」はロックが偏見を持たれない現代の祭りだが、ウッドストックは、ロック=不良がやるもの、と思われていた時代の話である。回りの大人たちの反感は今とは比べられないほどだったに違いない。
この時代を扱った映画の定番といえば、ベトナム戦争か学生運動かヒッピー。でも、実際にはエリオットのように真面目でいけてない素朴な青年も大勢いただろうし、そういった若者たちは、周りの盛り上がりを内心うらやましく思いながらも、殻をやぶれずにいたのだろう。
この映画には、ステージ上のジャニスやジミヘンの姿はまったく出てこない。ウッドストックに集まった若者たちが薬を飲んでトリップしたり、泥だらけになったり、沼で裸で泳いだり…。そんな姿をエリオットの目を通して追っていく。
途中からすっかりエリオットに感情移入し、ウッドストックの開放的な雰囲気を謳歌する若者たちに乗せられ、自分もその場にいるようなトリップ気分に…。
古いタイプの両親との関係や、ゲイであることの悩みなど、エリオットはいろいろ抱える問題も多いのだが、このイベントをきっかけに、一歩を踏み出そうとする。
祭りの後、山のようなゴミをバックに、すがすがしそうなエリオットの姿は印象的で、彼の旅立ちに拍手を送りたくなった。
この映画は若者中心の映画ではあるのだが、両親の姿もしっかりと描かれている。
ロシア系ユダヤ人の母は、徹底した金の亡者。ホテルの客にもケチなことばかりいい、融資をしぶる銀行員の前で悪態をつく。一方、父親は生きがいをなくし、生きた屍状態。そんな二人がウッドストックをきっかけに少しだけ変わっていく(祭りが終われば、母親はまた業つくばりに戻るのでしょうが)。
母を演じたのは「ベラ・ドレイク」で怪演したイメルダ・スタウントンなのだが、これがまた上手い!イギリス版市原悦子の体当たり演技は必見です。
また、脇役としてデカイ女装の用心棒(リーヴ・シュレイバー)も登場するのだが、彼のちょっとした一言もピリリときいて、いいスパイスとなっている。「ガープの世界」でジョン・リスゴーが演じたオカマを彷彿とさせる存在感!(女装といえば、ミッツや松子が今、流行ってますが)
そしてそして、ウッドストックのプロデューサーを演じたジョナサン・グロフ(要チェックの新人!)もキラキラ光ってて美しかった~。
久々に心が晴れ晴れする名作で、この映画を抱きしめて帰りたくなった。
ウッドストックを舞台にはしてはいるが、アン・リー監督の初期作品「推手」「恋人たちの食卓」路線のハートウォーミングな作品でした。
最後にもう一言:この映画の後でも先でもいいので、ドキュメンタリー映画「ウッドストック」を見ると、よりこの時代を体感できるはず。私も今から、昔録画したビデオをひっぱりだしてみるつもりです^^!
ウッドストックがやってくる!TAKING WOODSTOCK
アン・リー監督、ディミトリ・マーティン、ダン・フォグラー、ヘンリー・グッドマン、ジョナサン・グロフ、ユージン・レヴィ、リーヴ・シュレイバー、イメルダ・スタウントン出演
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