CINEMA草紙

ブラジル、アルゼンチン、メキシコ、キューバ等々、中南米カリブのラテン映画・音楽・カルチャーを紹介するニッチなブログです!

ギドク監督新作『The NET 網に囚われた男』は“貧しさ=不幸”という価値観にノーを突きつける映画であり、知る権利とは何ぞや?と考えさせるストレートな社会派映画です。  

スコセッシ監督の『沈黙』を見に行く前に、ギドク監督新作『The NET 網に囚われた男』のレビューを書きました。シンプルな映画ではありましたが、今、社会で起こっている様々なことを考えずにいられず、久しぶりにクドクドと書きました。書いても書いても自分の考えの整理はつかず…。

The NET 網に囚われた男 THE NET
監督:キム・ギドク、出演:リュ・スンボム、イ・ウォングン、キム・ヨンミン、イ・ウヌ
☆北朝鮮と韓国の国境付近で暮らすナム・チョルは、漁に出た際、網が絡まりエンジンが故障。漂流先は韓国領内だった。韓国警察に拘束され、スパイ容疑で執拗な取り調べを受けるが、ナムは家族の元へ帰りたいと言い続け、容疑を否定する。

 ギドク監督にしては珍しい正攻法の社会派ドラマ。つい拷問シーンや両国警察の理不尽さに目がいきがちだが「貧しさ=不幸」という価値観にノーを突きつける映画だと感じた。
 米国中西部では、ブルーカラーの白人にトランプ支持者が多いとのことだが、裕福になった移民が目に見え、それに対する嫉妬心が生まれ、自分が不幸なのは移民のせい、という自己中心的な理論によって、移民排斥の気運が高まっていると感じる。
隣に住んでる自分と肌の色が違う人や宗教の違う人が、潤っているのが目に見えれば、比較してしまうのは無理もないこと。逆に北朝鮮のように、鎖国をして遮断してしまえば、ナムのように「幸せ」は感じられるのだろう。ただ、それは真の幸せなのだろうか。
 「貧しさ=不幸」ではない一方で、人には知る権利もある。外の世界を知りたいと思う人が抑圧された社会は悪だ。ナムは「韓国のことを知りたくない」といって目を閉じるが、それは「知ったら北に戻ったときに痛い目にあう」という恐れから出た行動だった。もちろん、知りたくない人が「耳を塞ぐ権利」も存在はするのだが、好奇心は人のサガであり、一度知ってしまったら、それはパンドラの箱になり、二度と閉じることはできない。
 映画「ミッション」は、南米の先住民への布教が結果的に先住民を滅ぼしてしまう悲劇を描いていたが、ナムに起こった不幸もそれと通じるものがあると感じた。
 毎度毎度、過激な描写で観客を驚かせてきたギドク監督だが、この映画ではストレートに、政治に翻弄された男の姿を描いた。いつものノリを期待した観客は戸惑ったかもしれないが、ギドクはいい意味で観客を裏切ってくれた。ギドクワールドの新世界にも期待したい。
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Posted on 2017/02/03 Fri. 11:00 [edit]

category: 映画レビュー

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