CINEMA草紙

ブラジル、アルゼンチン、メキシコ、キューバ等々、中南米カリブのラテン映画・音楽・カルチャーを紹介するニッチなブログです!

麦の穂をゆらす風  

☆☆アイルランド独立までの長く険しい道のりを、市民兵となった若者の目から描いた社会派映画。ケン・ローチ作品に共通して見られる“まっすぐさ”はこの作品でも健在。真正面から直球を投げられ、胸にズシリと重くめり込むような痛さを覚えた。

☆舞台は1920年のアイルランド。医学を学び、医師への道を歩もうとしていた青年デミアンは、幼馴染が英国兵からなぶり殺されたことをきっかけに、メスを武器に持ち替え、英国からの独立を目指す市民兵となる。
しかし、仲間の密告によりデミアンたちは逮捕され、市民兵のリーダーで兄のテディは拷問を受ける。死刑執行の前日、見張り役の若者から助けられたデミアンたちは、密告者の元へ向かう…。

 はるか遠い国アイルランドの“事情”を知ったのは、U2の音楽からだった。
はじめは「ボノがかっこいい」という理由だけでアルバムを買い、「Sunday Bloody Sunday」を聞いた。
そして、「How long must we sing this song?」というフレーズに、タダならぬものを感じた。
それから、当時、ヨーロッパで頻繁に起こっていたテロや、IRAという名を知るようになり、ニール・ジョーダンをはじめとするアイルランド出身監督の映画を好んでみるようになった。
(以下、ネタバレあり)
 「IRAはテロ集団」という認識の人もいるだろう。でも、この映画を見ると、テロ行為を繰り返す集団も、始まりは心優しい小市民にすぎなかったことがよくわかるし、武器を持たざるを得なかった理由も見えてくる。
 友達や兄を大切に思うデミアンは、目の前で仲間が殺されたのをきっかけに兵士になる。
そして、兄が拷問を受ける声を聞き、牢屋にとり残され処刑された仲間を思い、裏切り者の少年を自らの手で処罰する。
情愛深い青年だったデミアンの手は、少年を処罰した瞬間に汚され、以後、血で血を洗う争いへと巻き込まれていく。

後半、イギリスとアイルランドで講和条約が締結されてからは、仲間同士の対立が描かれる。北アイルランドは独立を認められないなど、不当な条約に怒りを露にする強硬派と、条約を受け入れてから前進すればいいと考える穏健派。
弟デミアンは信念をまげない強硬派となり、兄テディは穏健派となって、兄弟が対立してしまう。戦争時は、身内が対立する構図はよくある話ではあるのだが、やはり、何度見ても辛い光景である。
数年前には、弟が兄の身代わりになろうとした牢屋の中。その同じ場所で、今度は政府側の人間となった兄が、弟に死の宣告をする。
頑なに信念を貫こうとする弟よりも、説得できずに悲嘆にくれる兄の姿に、思わずもらい泣きしてしまった。
最後の最後まで、兄が弟を逃がしてやることを望んだが、兄弟は結局、身内への愛情よりも大義に身を委ねてしまう。

弟の処刑後、兄は、弟の妻へ遺書を届けに行き「二度と顔をみせないで」と罵倒される。
この言葉は、デミアンが処罰した少年の母から言われた言葉と同じだった…。

メスを武器に持ち替え、裏切り者の少年を撃ち殺した時から、デミアンの向かう先は決まってしまっていたのかもしれない。

いまだに北アイルランド問題は、完全には解決されていないという。
闘争の歴史に、終わりはないということか。
タイトルの「THE WIND THAT SHAKES THE BARLEY」はアイルランド民謡とのこと。アイルランドののどかな風景をゆっくりと眺める余裕もないぐらい、悲しみに包まれた映画だった。

ケン・ローチはアイルランド出身かと思ったが、イギリス人らしい。母国の過去を冷静に批判できる目を持ったローチ監督に敬意を表したい。
日本だったら…、該当する監督は思い浮かばず。探せばいるんだろうけど、日の目を見ていないことだけは確か。
日本映画復活!と、浮かれる最近の日本映画界ですが、気骨のある社会派監督はいずこに?? 

麦の穂をゆらす風 THE WIND THAT SHAKES THE BARLEY
ケン・ローチ監督、キリアン・マーフィ、ポードリック・ディレーニー、リーアム・カニンガム、オーラ・フィッツジェラルド出演
参考CINEMA:「マイケル・コリンズ」「ブラディ・サンデー」
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Posted on 2007/02/05 Mon. 08:57 [edit]

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