CINEMA草紙

ブラジル、アルゼンチン、メキシコ、キューバ等々、中南米カリブのラテン映画・音楽・カルチャーを紹介するニッチなブログです!

ヨコハマメリー  

☆☆以前、このブログでも書いたが、横浜に住んでいたころに、何度か遭遇したことのある白塗り白ドレスの老婆「ヨコハマメリーさん」。
はじめて出会ったときは、あの化粧と衣装に驚き、一瞬、身を引いてしまった覚えがある。
「あの人、娼婦らしいよ」「まだ客とってるらしいよ」「ホームレス?」などなど、ウワサにはいろいろと聞いていたが、真実はわからぬまま。そして、いつのまにか、姿を見かけることもなくなっていった。
 横浜を離れて久しく経ち、当時を懐かしむ余裕も出てきた今、この映画を見ることは、メリーさんの半生や伊勢佐木町界隈の歴史を振り返るだけでなく、自分の過去を見つめなおすきっかけともなった。

映画は、異様な化粧と衣装に身を包んだ「メリーさん」と呼ばれる女性と関わった人々へのインタビュー形式で、淡々と進んでいく。
メリーさんをコンサートに誘ったシャンソン歌手、髪をカットしてあげていた美容室、着替え場所を提供していたクリーニング屋。そして、伊勢佐木町が華やいでいた戦後の混乱期に栄えた店・根岸屋を知る人々。
一つ一つのエピソードの間に、少し寂れた今の伊勢佐木町が映し出される。
映画が進むにつれ、記憶がどんどん蘇り、さらには華やかだった頃の伊勢佐木町を想像している自分に気がついた。

メリーさんを通して昭和という時代を振り返る構成は、もし当時を知る年配の方が撮っていたら、もっと重い話になっていたかもしれない。
でも、30代の若い監督が、背伸びすることなく、自分が興味を持ったものに素直に向き合って撮ったのが功を奏し、とても見やすいドキュメンタリーに仕上がっていた。

根岸屋はもちろん、クリーニング屋も美容室も、今はもうない。
メリーさんがあの町から姿を消すのと同時に、メリーさんのような人を受け入れる人情もあの町から消えてしまったのかもしれない。
今思えば、メリーさんを見かけたとき、「こんにちは」と、声をかけていたら、何かもっと違う思いで、この映画を受け止めることができたかもしれない。
でも、実際にメリーさんに会ったときは、「怖い」「気味が悪い」と直感的に思ってしまい、とてもお近づきになるような度量も持ち合わせていなかった。
(おそらく無理して近づいても「あっち行け」と、拒否されたでしょうが。)

「メリーさんの人生」は、幸せだったとは言えないかもしれないが、哀れむ気にもなれない。
人に頼らず誇りを持ってヨコハマに立ち続けた半生。
「これが私の人生なの」と、訴えているかのようなあの姿からは、「哀れさ」ではなく「気高さ」を感じた。

晩年、メリーさんは養老院に行き、2年前、亡くなったそうです。
メリーさんでいることをやめた彼女の最後の何年間は、穏やかであったと願いたいです。

ヨコハマメリー
中村高寛監督、永登元次郎、五大路子、杉山義法、清水節子ほか出演
スポンサーサイト

Posted on 2007/02/14 Wed. 18:32 [edit]

category: 未分類

tb: 0   cm: 0

コメント

コメントの投稿

Secret

トラックバック

トラックバックURL
→http://bossacine.blog59.fc2.com/tb.php/135-60663c50
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

プロフィール

最新記事

TWITTER

最新コメント

最新トラックバック

検索フォーム

アーカイブ

カテゴリ

リンク

RSSリンクの表示


▲Page top