CINEMA草紙

ブラジル、アルゼンチン、メキシコ、キューバ等々、中南米カリブのラテン映画・音楽・カルチャーを紹介するニッチなブログです!

善き人のためのソナタ   

☆舞台は1984年の東ベルリン。国家保安省のヴィースラー大尉は、反体制派の疑いのある人物の監視を担う生真面目な軍人だ。
ある日ヴィースラーは、ある劇作家とその恋人クリスタの監視を命じられる。
彼らのアパートに盗聴器を仕掛け、日夜監視を続けるヴィースラーは、次第に二人の生活に魅せられていく。
一方、監視されていることを知らない劇作家は、親友の自殺をきっかけに、国家批判の記事を西側の雑誌に投稿することを決意する。

自由主義者の芸術家と生真面目な軍人。普通ならまったく相いれないはずの二人が、盗聴する側とされる側という立場ではあるが、盗聴器を通じて知り合う(あくまで一方的に)。
盗聴する側の軍人は、今まで接したことのないタイプの二人の行動に興味を抱き、徐々に自分を同化させていく。

無表情でみるからに監視員っぽいヴィースラーが、二人の生活を盗聴しているときは無邪気な子供のようになり、厳しい顔に少しだけ人間らしさがあらわれる。
微妙な表情の変化で孤独な男の心情を表わすという難しい役どころを主演俳優のウルリッヒ・ミューエが見事に演じていた。

自分を表現するのが下手で、国家の言うとおりにしか生きられない男。そんな彼にも人間らいしい心があった。映画とはいえ、それを確認できたことが何よりもうれしかった。
そんなの人間なんだから当たり前、といえるかもしれないが、厳しい管理社会で監視員という役目を担っているヴィースラーにとって、人間らしさは必要のないもの。上司の命令に忠実に従う機械と同じだし、彼自身もそのことに何の疑問も抱いていない。
そういう人間こそが国家の宝であった社会主義時代の息苦しさを背景にしながらも、声高に社会批判せず、淡々と人間の心の変遷を追っていく。
見ているうちに、孤独な男ヴィースラーに、自分自身が同化してしまい、クライマックスでは、彼の気持ちを想像するだけで、涙があふれてきた。

主演俳優ミューエは、東ドイツ出身で、自分も監視された過去を持つらしい。そういう人物ならではの迫真の演技に、ただただ圧倒されっぱなしの2時間だった。

ただひとつ少々気になったのは、クライマックス後の展開。
ベルリンの壁崩壊から劇作家の復活までが説明的で、取ってつけたような感じがして興ざめしたが、
それでもやっぱりラストシーンのヴィースラーのアップにはウルウルきた。
役者の顔の演技で、これだけ心を揺さぶられたのは「ヴェラ・ドレイク」のイメルダ・スタウントン以来である。ウルリッヒ・ミューエという役者、これからも注目していきたい。

善き人のためのソナタ THE LIVES OF OTHERS
フロリアン・ヘンケル・フォン・ドナースマルク監督、ウルリッヒ・ミューエ、マルティナ・ゲデック、セバスチャン・コッホ出演
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Posted on 2007/04/18 Wed. 00:41 [edit]

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