CINEMA草紙

ブラジル、アルゼンチン、メキシコ、キューバ等々、中南米カリブのラテン映画・音楽・カルチャーを紹介するニッチなブログです!

ガエル・G・ベルナル主演のチリ映画『NO』レビュー  

2012年の東京国際映画祭が昨日、終了しました。
コンペ部門ではパレスチナを舞台にした人間ドラマ『もうひとりの息子』が作品賞を受賞したようですが(見逃してしまいました…)、当サイトでは、チリ映画の話題作『NO』をフューチャー。主演は、メキシコが生んだトップ・スター、ガエル・ガルシア・ベルナルです!

NO
パブロ・ラライン監督、ガエル・ガルシア・ベルナル、アルフレド・カストロ、ルイス・ニェッコ、アントニア・セヘルス出演

☆長い間、チリの恐怖政治を率いてきたピノチェト政権末期の1988年。
国際的な批判が高まる中、ピノチェトは、現政権の信任を問う国民投票の実施を決める。
国民の間では「出来レース」との諦めムードが漂っていたが、反体制派は「NO」キャンペーンを、若い広告プロデューサーのレネに依頼する。
 コカコーラのCMのような軽いノリの試作を見た反体制派の重鎮たちは、主義主張の見えないCMに唖然とし席を立つ。
レネは、弾圧を受ける活動家の元妻や、被害者家族の思いを苦慮しながらも、子供から老人まで口ずさめるCMソングや、カラフルなロゴマークで、「NO」キャンペーンを盛り上げていく。
高みの見物をしていた「YES」陣営は焦って様々な脅しをかけてくるが、「NO」キャンペーンの勢いは止まらず…。

☆☆ピノチェト独裁政権下の弾圧を描いた映画は、今やチリ映画の定番だし、今作もまた辛い拷問シーンがあるんだろうなあ、と覚悟して見始めたのだが、意外や意外、歌あり踊りありの軽~いCMのような政治キャンペーンに、いきなり肩すかしを食らった。
長い独裁政治に「NO」を言うのだから、当然、激しい口論やシュプレヒコール、嫌がらせや拷問、殺人もありだろう、と先入観を持ってしまっていたのだ。
独裁政権末期。政治に対して何も希望が持てず、諦めてしまっていた人々が、ノリのいいCMを見て、“楽しく”「ノー・モア・ピノチェト!」と声を挙げ始める、という展開が面白くて、思わず身を乗り出して、見入ってしまった。
もちろん、YES側の嫌がらせや暴力シーンも皆無ではないのだが、この映画の焦点はあくまで、選挙キャンペーン。
ジョージ・クルーニー監督作のような、米国政治のドロドロとした裏側を描いた作品とはまた違ったテイストで、「ノー・モア・ピノチェト!」キャンペーンが、乾いた視点でドキュメンタリー風に語られていく。
流れているのは、実際に使われたキャンペーンの映像で、その他のシーンでも、わざわざ80年代のカメラを取り寄せて、古臭い映像にした、というこだわりようで、ラライン監督のこの作品に賭ける思いが伝わってきた。

中東で起こった数々の反体制派運動も、21世紀のメディア、フェイスブックがきっかけだったように、この88年の選挙運動も、80年代ポップスの軽いノリが、チリの人々の心に火をつけたのだろう。
この“ブームを生む”手法が果たして正しかったのかは、判断出来かねるが、時代に乗った、ということでは、意味あるキャンペーンだったのだろう。
結局ピノチェトは、この選挙で敗北し、この後、チリを追われることになるのだから。

映画を見ていて思い出したのは、ミャンマーのこと。今のミャンマーも、この頃のチリと似た状況なのかもしれない。国際社会に媚びるように民主化に動き出し、スーチーさんの軟禁を解き…。今、公平な選挙が行なわれれば、チリと同じように「ノー・モア独裁政治」に人々は動くに違いない。

「80歳の超タカ派政治家、新党発足!」が、話題になっている今の日本と、独裁政治末期の国を比べることはできないけれど、国民がシラケや諦めで、傍観しているうちに、政治が勝手に動いていく状況はヨロシクナイ、ということだけは確か。日本でもチリのような革命的なことが起こり得るのだろうか…。

*映画の上映後、プロデューサーの話を聞けたので、少しご紹介。

 プロデューサーの一人であるダニエル・マルク・ドレイフェスは、スコットランド生まれのブラジル育ち。父親が政治学者で、幼いころにブラジルの軍事政権下を経験していた彼にとって、南米の軍事政権は身近な問題であった。
 同映画のもう一人のプロデューサー、ラライン監督の兄からこの作品の構想を聞いたときに、絶対に自分も参加したい、と手を上げたという。
「この映画は80年代のチリが舞台ではあるが、今、世界で起こっている様々な民主化運動にもつながるテーマであり、タイムリーな作品」と力説。
その他「実際にはNOキャンペーンの中心人物は二人いたのだが、彼らはこの映画ではYES側の人物として客演しているんだよ。一人はガエルがテープを渡すTV局の守衛さん役」といったトリビアも披露してくれた。
ブラジル育ちらしい、サービス精神旺盛の陽気な若きプロデューサー、ダニエル・マルク・ドレイフェスにすっかりメロメロになってしまいました*^^*。
もちろん、画面の中の苦悩するガエル君もステキです。
アカデミー賞外国語部門のチリ代表にも選ばれたそうですし、ぜひ日本で一般公開してほしい作品です!

予告編はこちら
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Posted on 2012/10/29 Mon. 10:21 [edit]

category: ラテン映画

thread: 映画祭 - janre: 映画

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詳細はこちら

Posted on 2012/10/26 Fri. 20:54 [edit]

category: ブラジル・南米の話題

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ラテンビート映画祭のプチ、感想。今年も粒ぞろいでありました!  

ラテンビート映画祭、今年もずらりとバラエティ豊かなラインナップで大満足!

ロドリゴ・プラ監督の『マリアの選択』は前作、前々作とはまったくテイストが違う老人と娘の物語。
じっくりじわじわ染みてくる、小粒だけとよい作品でした!

ブラジル映画『シングー』は、さすが実話なだけあって、先住民と白人の関係がリアル。広大なアマゾンの景色と先住民族のゆるやかな暮らしぶりをみて、すがすがしい気持ちになれました。

一方の『トロピカリア』は、同じブラジルでもまったくテイストの違う都会的で超個性的なドキュメンタリー。アンダーグラウンド、前衛、などなど、60年代に生きた人たちがうらやましくなるほど、ぶっ飛んでいて、心が躍りました。

スペインの『悪人に平穏なし』『EVA』『As luck would have it』もそれぞれ、タイプが違うけど、いずれ劣らぬ力作ぞろい。

アルゼンチンの3本、『ホワイト・エレファント』『獣たち』『Estudiante』は、ラテンビート映画祭ならでは、インディペンデント色の強い作品。

『ゾンビ革命』『俺たちサボテン・アミーゴ』は、肩の力を抜いて笑える快作です!!

横浜は10日(水)まで、梅田・京都・博多は18日スタートです!

Posted on 2012/10/08 Mon. 19:31 [edit]

category: 映画賞・映画祭

thread: 映画祭 - janre: 映画

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来年のアカデミー賞外国語映画部門、ブラジル代表『センチメンタルなピエロの旅 O Palhaço』&ウルググアイ代表作『マリアの選択 La demora』。どちらも日本で上映!!  


来年のアカデミー賞外国語映画部門の各国代表作が続々、発表されておりますが、ブラジルからは、まもなく始まるブラジル映画祭(10/6~)に出品されているセルトン・メロ監督(人気俳優でもあります!)の『センチメンタルなピエロの旅 O Palhaço』が選ばれました。

そしてそして、
ウルグアイ代表は、現在、ラテンビート映画祭で公開中、本日(10/3)新宿で上映されるロドリゴ・プラ監督『マリアの選択 La demora』が選ばれました!!

どちらも、日本でこんなに早く見れるなんて、超ラッキーです!!

ラテンビート映画祭

ブラジル映画祭

Posted on 2012/10/03 Wed. 11:29 [edit]

category: 映画賞・映画祭

thread: 映画祭 - janre: 映画

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