CINEMA草紙

ブラジル、アルゼンチン、メキシコ、キューバ等々、中南米カリブのラテン映画・音楽・カルチャーを紹介するニッチなブログです!

ラテンビート映画祭「わが父の大罪」レビュー  

☆敵対する政治家の殺害や飛行機の撃墜等、コロンビアで極悪非道の麻薬王として君臨し、1993年に殺害されたパブロ・エスコバル。父の死の直後に祖国を去り、アルゼンチンで身元を隠しながら暮らしていたセバスティアンは、30歳を過ぎて密かにコロンビアに帰国。父に殺された政治家の遺族と対面する。

コロンビアは、日本人にとって馴染みの薄い国である。聞いたことがあるのは、ハリウッドのアクション映画の中だけ。テロリストと麻薬の密売人しかいない国、飛行機降りた途端に誘拐される、などなど、多くの人が、コロンビアという国にはマイナスのイメージしか持っていないだろう。
南米で暮らしたことのある自分でさえ、コロンビアに行きたいとは思わなかった(行くことを許されていなかった)。有名なリゾート地もあるとは聞いていたが、学校の運動会を機関銃持った軍人が警備している写真を見せられ、想像以上に危険な国、というイメージが刷り込まれてしまった。そんな危ない国で恐れられた男というのはいったいどれだけ悪い奴なのか…。

映画に映し出されたパブロは、社会的には悪人そのもの。怖いものは何もない傲慢極まりない男である。すべてを手に入れ、刑務所ですら自分のためのお城に改造するような絶対的権力を持っていた。自分に逆らったものは皆殺し、人の命なんて軽いもの、と考えていたのだ。
一方で、家族には愛を注ぎ、やさしい父であり夫だった。また、家のない人々に町を作ってあげるなど、慈善事業も行い、一部の人からはヒーロー扱いされていた。
そんな二面性のある父を持ってしまった息子セバスティアンの心情は、想像できないほど複雑なものだったろう。父が殺害された直後、アルゼンチンに脱出した16歳のセバスティアンは、当初「父の仇をとってやる」と映画の中で述べている。
だが、30歳を過ぎたセバスティアンは、復讐がさらなる悲劇を生むことを悟り、父の殺した政治家の息子たちと対面して謝罪する道を選んだ。映画では、そんなセバスティアンの複雑な心境、そして犠牲者の遺族である若者たちの苦悩が、包み隠さず語られている。
彼らの発言にヤラセはなく真実であることは、画面を通じて伝わってきたし、セバスティアンと遺族との対面シーンは、息をのむほど緊張した。お互いに堅く握手しあう姿には思わず涙…。
これぞドキュメンタリーの真骨頂、と呼べるほど、マフィア一族のリアルな物語が語られていた。

名作「ゴッドファーザー」3部作は大好きな映画ではあるが、パブロ・エスコバルの人生はまさにビトー・コルレオーネそのもの。貧しさから成り上がり、悪事でのし上がった半面、貧しい人々への施しも忘れない男だった。
息子セバスティアンがもしマイケル・コルレオーネと同じ道を歩んでいたら…、などと考えたら鳥肌がたった。
日本公開は無理でも、DVD化される価値あり!の傑作だ。

わが父の大罪 -麻薬王パブロ・エスコバル- PECADOS DE MI PADRE
ニコラス・エンテル監督
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Posted on 2010/09/30 Thu. 19:18 [edit]

category: 映画レビュー

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東京国際映画祭&東京フィルメックスからPick UP!  

今年の東京国際映画祭&東京フィルメックスから、BOSSAが見つけた注目作をご紹介。

東京国際映画祭】10/23-31

中南米からは、アルゼンチン映画「隠れた瞳 LA MIRADA INVISIBLE」がコンペ部門にエントリー。
軍事政権下の学校で、厳格な女教師が欲望と規律の間で苦悩する姿を描いた作品。
ヴィック・ムニーズ/ごみアートの奇跡」は、ブラジル人アーチストが、ゴミ処理場で働く若者たちとゴミ・アートを生み出していく姿を追ったドキュメンタリー。

見逃せないのは、ベネチアで特別賞&ビンセント・ギャロが男優賞を受賞した「エッセンシャル・キリング」。監督はポーランドの鬼才イエジー・スコリモフスキ。
ポランスキー監督の「ゴースト・ライター」、ワン・シャオシャイ監督の「重慶ブルース」も面白そう。
コンペの審査委員長はお気に入りのニール・ジョーダン監督デス。

東京フィルメックス】11/20-28

こちらでは、なんといっても寡作の監督ジャコ・ヴァン・ドルマルの「ミスター・ノーバディ」。「八日目」の日本公開は10年以上前。
待ちくたびれた感はありますが、しっかり作品を作っていたのですね~。ファンとしてはうれしい限り。
カンヌ、パルムドール受賞の「ブンミおじさん」、カンヌ、脚本賞受賞の「」も見応えありそう。ジャ・ジャンクー監督とキアロスタミ監督の新作もあるわ!

相変わらず、フィルメックスのラインナップは素晴らし~!

Posted on 2010/09/28 Tue. 15:11 [edit]

category: 映画賞・映画祭

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「ペルシャ猫を誰も知らない」レビューをUPしました!  

☆☆昨年の東京フィルメックスで見逃して以来、気になっていたゴバディ監督の新作。気持ちが沈みそうな辛~い映画か、と思ったら意外や意外。自由を渇望する若者たちの姿を生き生きと描いた青春賛歌でした!

☆テヘランで暮らす若いミュージシャンのカップル、ネガルとアシュカンは、演奏活動ができないテヘランを離れ、ロンドンへ脱出する決意をする。二人から偽造パスポートの手配を頼まれた便利屋ナデルは闇業者を紹介。パスポートを待つ間、彼らにアルバム製作を持ちかける。
テヘランのインテリ層の若者たちは、英語が話せ、ファッションもお洒落。車も持っていて素敵な家に住んでいる。一見、何の不自由もなく、うらやましいぐらい豊かな生活を送っている。それなのに、好きな音楽を聞いたり演奏したりすることができない、という現実は、正直予想外だった。彼らが貧困層だったら、まだ話はわかるのだが…。
それが社会の違いであり、そこで暮らすなら社会のルールは守らなければならない。というのは頭で理解できても、表現の自由のない暮らしというのは何とも窮屈そうである。
女は人前で歌ったらダメ、音楽の演奏やCD発売は検閲がある、飼い犬は外に連れ出したらダメ、等々。
日本人からみたら何とも奇妙なルールではあるのだが、まあ、音楽やらなくても生きてはいけるし、犬は家の中で飼えばいいし…。
ゴバディ監督の前作「亀も空を飛ぶ」が、あまりにも過酷な虐げられた子供たちの話だったので、このギャップには正直驚いた。
この映画はノリがポップで音楽も楽しく、監視の目をくぐってあの手この手で自分たちの夢を実現しようとする若者のバイタリティがヒシヒシと伝わってきて、ぐっとひきこまれた。彼らの奏でる音楽も、閉そく感を打破しようとする力がみなぎっていて、「ロックの原点ここにあり!」って感じ。
何でも手に入り、何をやっても許される日本のような自由な社会で暮らす若者が奏でる音楽とはまったく違った、外向きのパワーに圧倒され、スクリーンに向かってエールを送りたくなった。
クルド人監督のゴバディは、この映画をテヘランでゲリラ撮影し、今は海外に脱出。出演者もロンドンで活動中とのこと。フィクションではあるのだが、そこにはリアルな現実が投影されていた。
便利屋ナデルの軽快なフットワーク、ウィットにとんだ台詞は圧巻。
観客の思いを逆なでするような厳しいエンディングも、なんともゴバディ監督らしい。
鋭い反骨精神を持ちながらも決して堅苦しくないゴバディ映画は、クストリッツア映画に通じるものあり。まだまだ若い監督なので、次回作にも期待大です。

ペルシャ猫を誰も知らない NO ONE KNOWS ABOUT PERSIAN CATS 
バフマン・ゴバディ監督、ネガル・シャガギ、アシュカン・クーシャンネジャード出演

Posted on 2010/09/27 Mon. 18:59 [edit]

category: 映画レビュー

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「Tropa de elite」続編、ついに公開!  

「Tropa de elite2」が10月8日、ついにブラジルで公開されます!
日本で見られるのは、いつのことやら…。

公式サイト&予告編

Posted on 2010/09/24 Fri. 16:45 [edit]

category: ブラジル映画

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大盛り上がりの「ラテンビート映画祭」  

初日からほぼ毎日通っている「ラテンビート映画祭」。今年は例年以上にバラエティに富んだ作品ばかりで、大満足!
コッポラ監督&ヴィンセント・ギャロの「テトロ」は期待以上の完成度で圧倒されたし、
カルロス・サウラ監督の「フラメンコ×フラメンコ」は泣く子も黙る超一流の芸術品。
ロドリゴ・ガルシア監督の「愛する人」は正直、あまり期待してなかったけど、女の幸せについてしみじみ考えさせられ、
家政婦ラケルの反乱」では、満身創痍で奮闘するラケルに元気をもらえた。
ブラジル映画「ファベーラ物語」は、ファベーラ生活も悪くないね、と思わせる市井の人々の日常がやさしい視点で描かれていて好印象。

そして、一番のヒットは「わが父の大罪 麻薬王パブロ・エスコバル」。
コロンビアの麻薬王と恐れられたパブロの息子セバスティアン・マロキンが、大人になり、父によって殺された政治家の息子たちと対面するまでを追ったドキュメンタリーで、リアルな「ゴッドファーザー」の世界が描かれていた。
来日したゲストのマロキン氏は、まん丸体系の愛嬌のあるお兄さんだったが、マイケル・コルレオーネのように、マフィアの父の後を継いでいたかもしれない、と思うと、鳥肌が立った。
日曜の上映後の会場には、パブロの故郷、コロンビアのメデジン出身の人や、ニカラグア人、エルサルバドル人なども来ていて、それぞれの国の実情や麻薬取引に対する考えを語ってくれ、朝まで討論してほしいぐらい盛り上がっていた。
“憎しみの連鎖”を断ち切る決断をしたマロキン氏、そしてマロキン氏を受け入れた被害者家族の勇気に心底感動…。
マロキン氏は、会場からの割れんばかりの拍手に対し、
「父によって殺された被害者家族にこの拍手を捧げます」と、締めくくった。

ラテンビート映画祭、新宿は23日までですが、10月8日から11日まで横浜でも上映します!
10月9、10日は横浜ジャズプロムナードもありますしー、ラテン映画とジャズをまとめて楽しめるまたとないチャンスです!

Posted on 2010/09/21 Tue. 17:41 [edit]

category: 映画賞・映画祭

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