CINEMA草紙

ブラジル、アルゼンチン、メキシコ、キューバ等々、中南米カリブのラテン映画・音楽・カルチャーを紹介するニッチなブログです!

防災の日には「ユナイテッド93」を見よう  

☆☆「ユナイテッド93」、見に行こうかどうか、正直、迷っていた。
あの時のニュース映像は今でも鮮明に脳裏に焼きついているし、作られた映像を今のタイミングで見てみたい、という気になれなかたのだ。

2001年9月11日。あの日、私は北海道旅行の最中で、閑散とした札幌・ススキノで最後の晩餐を楽しんでいた。
一報を聞いたのは、帰りのタクシーの中。運転手から「アメリカですごいことが起きてるよ」と聞いたのが最初だった。
私だけでなく、誰もが、あの日、あの時、何をしていたかは、忘れることができないだろう。とくに、アメリカ国民にとっては…。

映画「ユナイテッド93」は、自爆テロを決行しようとしている男達の様子を、まず映し出す。
ホテルの一室で仲間と祈る男達は、無差別テロを計画しているようには見えない、気の弱そうな青年である。これから自分たちがしようとしている、とてつもなく大きなことに怯える姿は、本当にそうだったかは別にしても、同情に値する。きっと、彼らも人として何かを感じ、震えていたのだろう。そう信じたい。

この冒頭シーンで、私は「見に来て正解だった」と確信する。
悲劇につきものの大げさな演出さや、敵を人間扱いしない一方的な戦争映画とは違い、人間を平等に、リアルに描こうとしている真摯な姿勢が感じとれたからだ。

そして映画は、飛行機に乗り込む人々、管制センターで働く人々の日常を淡々と描いていく。もし、これがサスペンス映画だったら、まちがいなく退屈なシーンが長すぎる、との批判を受けそうな単調さである。
でも、観客はこの後の大きな出来事を知っているので、退屈に見える冗長な日常が、どれだけかけがえのないものかを感じることができるのだ。

2001年9月11日の朝、アメリカ東海岸の主要空港を飛び立った旅客機が、何者かにハイジャックされたとの情報が入る。
管制センターや軍では情報が錯綜し、何が何だかわからないパニック状態に陥る。
そんな中、民間旅客機2機がWTセンターに追突。もう1機は国防総省ペンタゴンに激突する。
人々は、WTセンターに飛行機が追突するシーンを、呆然と見つめることしかできない。

一方、ハイジャックされたユナイテッド航空93便内では、地上との電話でWTセンター追突を知らされた乗客たちが、自爆テロ犯を襲撃することを決意。誰も助けてはくれない。自分たちでどうにかするしかない、と覚悟し、急降下する飛行機の中で、テロリストたちに向かっていく。
 
緊迫する乗客、興奮するテロリストたち。
映画は、彼らの様子を克明に描き、電話の向こうで心配する家族をまったく映さない。声すら聞かせない。
泣かせるための映画なら、子供の泣き声、かわいい笑顔など見せるんだろうけど、写真すら映さない。乗客が一方的に、家族や恋人に「I Love You」と電話で伝えるシーンだけを映し出す。それがかえって痛々しく、胸に突き刺さる。
もし自分だったら、誰に何と伝えるのだろう。
想像すらできない…。
この映画に「タイタニック」のようなドラマチックさを期待した人は、戸惑ったかもしれない。でも、これが現実なのだ。
 
本作に登場する管制官や軍関係者の一部の人は、あの日、実際に現場で勤務していた本人が自ら演じているという。専門用語が飛び交うので、詳しい内容までは理解できなかったが、とにかくすごい緊張状態にいたことだけは、肌から伝わってきた。過剰な演技は何一つないけれど、現場に助けにいけないもどかしさ、悔しさ、絶望感も伝わってくる。すごいリアリズムである。

奇しくも今日は防災の日。
会社等では、大々的に防災訓練が行われているところも多いだろう。
いざ、災害にあったとき、管理部門がどれだけ混乱し、情報が錯綜するのか。この映画は、リアルな現場が再現されていて、とても参考になる。
そしてまた、形だけの防災訓練なんて実際は何の役にもたたない、ということもよくわかるはずである。

ユナイテッド93 UNITED 93
ポール・グリーングラス監督、ハリド・アブダラ、ポリー・アダムス、オパル・アラディン出演
スポンサーサイト

Posted on 2006/08/31 Thu. 13:38 [edit]

category: 未分類

tb: 0   cm: 0

スペイン・ラテンアメリカ映画祭  

9/16-9/22まで、渋谷シネアミューズで、第3回スペイン・ラテンアメリカ映画祭が開催されます。

天国の口、終わりの楽園」の主演コンビ、ガエル・ガルシア・ベルナル、ディエゴ・ルナがプロデュースした甘酸っぱい青春モノ「ドラマメックス」、
マリオ・バルガス・リョサ原作、イザベラ・ロッセリーニ主演の社会派映画「ヤギの祝宴」、
トライベッカ映画祭、ゴヤ映画祭などで優秀賞を受賞したフォークランド紛争モノ「火に照らされて」、
「イパネマの娘」の作詞家ビニシウス・ヂ・モラエスの半生を追ったドキュメンタリー「ビニシウス・ヂ・モラエス」など、
ラテン好きにはたまらないラインナップ!
かなり充実しているのですが、私は、見にいけそうにありません。悔しい…。

詳細はこちら

Posted on 2006/08/29 Tue. 19:55 [edit]

category: 未分類

tb: 0   cm: 0

トロント国際映画祭情報(1)  

カナダのトロントで9月7日から16日まで開かれるトロント国際映画祭。歴史は長いし、ラインナップも豪華ですが、日本ではなぜかあまり注目されていないようですので、チラッと情報をお届けします。

【GALA PRESENTATIONS】
「PENELOPE」
マーク・パランスキー監督、クリスティナ・リッチ、リース・ウィザースプーン、ヘイデン・クリステンセン出演
*次々と不幸に襲われながらもたくましく生きる女性ペネロペの半生をコミカルに描いた作品。ハリウッド版「嫌われ松子~」?。

「AWAY FROM HER」
サラ・ポーリー監督、ジュリー・クリスティ、オリンピア・デュカキス出演
*「アメリカ、家族のいる風景」で透明感のある娘役を演じた女優サラ・ポーリーの長編デビュー作。アルツハイマーの妻と夫の危機を描く。若い監督と熟年俳優のコラボが面白そう。一番、注目してる作品。

「BONNEVILLE」
クリストファー・N・ローリー監督、ジェシカ・ラング、キャシー・ベイツ、ジョアン・アレン出演
*夫を亡くした中年女性が、友人たちと旅をするロードムービー。「サイドウェイ」の女版?。ロードムービー好きとしては、はずせません。

「AMAZING GRACE」
マイケル・アプテッド監督
*18世紀後半、奴隷制廃止を訴えたウィリアム・ウィルバーフォースの半生を描く。

「A GOOD YEAR」
リドリー・スコット監督、ラッセル・クロウ、アルバート・フィニー出演
*ピーター・メイルの同名ベストセラーを映画化。銀行員がワイン農園のオーナーになる話。リドリーとラッセルのコラボだから鎧モノかと思ったら…。

「BREAKING AND ENTERING」
アンソニー・ミンゲラ監督、ジュード・ロウ、ジュリエット・ビノシュ、ロビン・ライト・ペン出演
*ジュードとロビン・ライトが夫婦役の三角関係モノ?。ミンゲラ監督とジュードが組むとなると「コールドマウンテン」みたいな作品か。ちょっと苦手なジャンル…。

「FOR YOUR CONSIDERATION」
クリストファー・ゲスト監督、キャサリン・オハラ出演
*「ドッグショウ」のゲスト監督の新作。当然、どたばたコメディでしょう。

「MON MEILLEUR AMI」
パトリス・ルコント監督、ダニエル・オトゥーユ出演
*男同士の友情を描いたコメディ。ルコント監督が男の友情を描くなんて珍しー。

「ALL THE KING'S MEN」
スティーヴン・ザイリアン監督、ショーン・ペン、ジュード・ロウ、ケイト・ウィンスレット、マーク・ラファロ出演
*理想に燃える男が、政治腐敗にまみれて地に落ちていく様を描いた社会派映画。リメイク映画を脚本家として超有名なザイリアン監督がどう料理するか。キャストも豪華。とくにマーク・ラファロに注目!

「DIXIE CHICKS: SHUT UP AND SING」
バーバラ・コップル監督
*ブッシュ政権を公然と批判して話題になったカントリーグループ、ディキシー・チックスを追ったドキュメンタリー。監督はウディ・アレンのドキュメンタリーも撮ってます。

「AFTER THE WEDDING」
スザンネ・ビエール監督(「しあわせな孤独」)
*コペンハーゲンに暮らす裕福な夫婦とインドの孤児院出身の男の交流を描く(?)。

「THE JOURNALS OF KNUD RASMUSSEN」
ザカリアス・クヌク監督
*1920年代のヨーロッパの冒険家とイヌイットの交流を描いた作品。監督は「氷海の伝説」でカンヌ・カメラドール受賞。監督自身もイヌイットだそうです。

「NEVER SAY GOODBYE」
Karan Johar監督
*サッカー選手と編集者のカップルの悲喜こもごもを描いたボリウッド映画。

 そのほか、バーホーベン監督、アルモドバル監督などの新作も上映予定だが、ベネチア及びカンヌとだぶっているので割愛します。

Posted on 2006/08/25 Fri. 07:41 [edit]

category: 未分類

tb: 0   cm: 0

「グエムル」とギドク監督  

☆☆怪物ものは苦手なので、期待せずに見にいったのだが、これが予想外に面白くてびっくり。怪物よりも、オトボケ家族のキャラクターと、社会を皮肉った乾いた視点がツボにはまった。意外や意外の、タナボタ映画でした。

☆ソウル市内を流れる漢江の河川敷に、ウイルスを持ったなぞの巨大物体が現れ、人々を襲う事件が発生。売店を営むパク一家の孫娘チョンソも、怪物にさらわれてしまう。
 嘆き悲しむ家族だったが、チョンソの父親カンドゥの携帯に、チョンソから電話が入る。
「排水溝にいる」とだけ聞き取ったカンドゥは、娘が生きていることを訴えるが、警察も医者も「ウイルスに脳がやられて、幻覚をみているだけ」と、とり合わない。
 次男と長女も加わったパク一家は、愛するチョンソを探すため、隔離病棟を抜け出すが…。

 飄々とした父親を筆頭に、頭の弱いダメ長男、カッコばかりの次男、アーチェリー選手の長女が、力を合わせて怪物とたたかうファミリー・ドラマ、ではあるのだが、家族みんながオトボケで、どこか抜けた感じなのが小気味いい。
 警察も医者も軍も、一大事なはずなのに、みんなのんびりと構えているのも奇妙である。
 一般的な怪獣パニックものだと、大げさな緊迫感が見所の一つなんだけど、この映画では、怪物を追う側が、みーんないい加減。子供が怪物に捕まって怖い思いをしてるっていうのに、パク一家はそろいもそろってだらしがないし、国も何も手を打とうとしない。怪物も、もとはと言えば医者の「いい加減さ」の産物だし…。
 大人も社会もまったく当てにならない、ってことがこの映画のテーマ? と思うぐらいに「いい加減さ」が目立っていて、そこがまた面白かった。
 怪物の形相や動きも、怖いというよりは、グロテスクで気持ち悪いけどちょっとコミカル。そのうち、しゃべりだすんじゃないの?と、思うぐらいリアルな動きで楽しめた。

 それと、日本の特撮映画ではありえない、まさかのエンディングも私好み。「大人社会のいい加減さ」を描いたので、映画のラストもいい加減にしちゃいました、ってことでしょうか。
 思わずつっこみ入れたくもなったけど、そのふざけたノリが、またよかったり…。
 社会ってこういうもんかもね~。(詳細は見てのお楽しみ)

 ポン・ジュノ監督はハッピーエンディングが嫌い、と睨んだ。今後の作品も要チェックです。
 &「殺人の追憶」で冷徹な美青年を演じたパク・ヘイルが間抜けな次男役を好演していた。あの顔ならソフトな二枚目路線でいけるだろうに。コミカルな役に挑戦する心意気が気に入った!

最後にもう一言:
 韓国映画界の異端児キム・ギドク監督が「グエムル」批判をしたことでバッシングを受け、引退宣言をした、という記事を目にした。
 ギドク監督の人間心理の暗い部分をえぐるような作品が私は好きだし、これからも作り続けて欲しいと思っている。
 一方、「グエムル」のような社会をおちょくったエンタテイメント作品も、時々は楽しみたい。
 考えさせられる映画も、楽しめる映画も、観客はどちらも望んでいる。表現方法は、いろいろあっていいはずだ。
 ギドク監督は、ちょっと量産しすぎて疲れているのでしょう。しばらくゆっくり休んで、パワーアップして、戻ってきてほしい。 

グエムル -漢江の怪物- THE HOST
ポン・ジュノ監督、ソン・ガンホ、ピョン・ヒボン、パク・ヘイル、ペ・ドゥナ出演

Posted on 2006/08/24 Thu. 16:41 [edit]

category: 未分類

tb: 0   cm: 0

ローズ・イン・タイドランド  

☆ジャンキーの両親を世話する10歳のジェライザ=ローズは大の空想好き。毎日、首から上だけのバービー人形を指にはめ、おしゃべりを楽しんでいる。
 ある日、母親がオーバー・ドーズでショック死。ローズは父に連れられて、父親の実家へ向かう。雑草の生い茂った荒地に寂しげに建つ廃屋で暮らし始めたローズだが、まもなく、父親も昇天してしまう。
 
 ミッチ・カリンの小説「タイドランド」を先に読んでいたせいか、ストーリーにはさほど面白みを感じなかったのだが、ローズを演じたジョデルちゃんの演技には驚かされっぱなしだった。
 汚れたバービー人形の頭でお人形さんごっこをするローズは、子供らしくて無邪気なんだけど、両親にヤクを注射するときの手さばきは、看護婦並みに手馴れていて、表情も大人びている。
 そのアンバランスなところも魅力的で、ローズの一挙手一投足に終始釘付けだった。
 テリー監督は、ロリコンだったの?!、と、疑うほど、ローラ一色の映画。
 見る前は、「ラスベガスをやっつけろ」のノリで、イマジネーションの生き物がいろいろ飛び出てくるのだろう、と予想していたのだが、ほぼすべて、ローズの演技と語りで表現されていた。あの演技があれば、細工は不要、と思ったのかもしれない。
 ただ、ローズは無茶苦茶かわいかったのだが、隣の魔女が出てくるあたりから、少々、飽きてしまった。知的障害(?)の青年とローズの交流はありがちなパターンだし、あまり見たくない絵柄でもあったので、ローズ一人で突っ走ってほしかった。
 それと、ギリアム監督ファンとしては、やっぱり監督独自のイマジネーションの世界も、もっと見たかった、というのが正直なところだ。
 さすがのギリアム監督も、オジサンですから、孫娘みたいなジョデルちゃんの色気&無邪気な演技にメロメロになってしまったのでしょうか。
 同じ美少女一色映画なら、「初恋の来た道」のチャンツィイーよりも、私は断然、毒のあるジョエルが好き(比べるのもどうかとは思いますが^^;)。
 ジェライザ=ローズは、このまま普通の女の子にならずに、ずっとイマジネーションの中で生き続けて欲しい。「ローズの世界」パート2も、ぜひ作ってもらいたいなあ。

ローズ・イン・タイドランド TIDELAND
テリー・ギリアム監督、ジョデル・フェルランド、ジェフ・ブリッジス、ジェニファー・ティリー、ジャネット・マクティア、ブレンダン・フレッチャー出演

Posted on 2006/08/20 Sun. 17:12 [edit]

category: 未分類

tb: 0   cm: 0

プロフィール

最新記事

TWITTER

最新コメント

最新トラックバック

検索フォーム

アーカイブ

カテゴリ

リンク

RSSリンクの表示


▲Page top