CINEMA草紙

ブラジル、アルゼンチン、メキシコ、キューバ等々、中南米カリブのラテン映画・音楽・カルチャーを紹介するニッチなブログです!

オールドファンをうならす35年ぶりの続編『ブレードランナー 2049』レビュー  

ブレードランナー 2049 BLADE RUNNER 2049
監督:ドゥニ・ヴィルヌーヴ、出演:ライアン・ゴズリング、ハリソン・フォード、アナ・デ・アルマス、マッケンジー・デイヴィス、ロビン・ライト、シルヴィア・フークス、ジャレッド・レトー


荒廃が進む2049年の地球。人造人間“レプリカント”のKは、不満分子の旧式狩りをする捜査官だ。ある旧式を始末した際、Kは木の下に埋められた骨を発見する。Kはこの骨と子供時代のかすかな記憶の謎を解き始める。一方、レプリカント開発を手掛けるウォレス社の総帥はレプリカントの生殖機能開発に執着していた。

 35年ぶりのブレードランナー続編ということで、より豪華にパワーアップした最新のエンタメ作品に仕上がったいるのだろうと予想していたのだが、見事に、いい意味で期待を裏切られた。
新型レプリカントKの悶々とする日々を、美しい近未来映像を背景に哲学的に描いている。巨匠リドリー・スコット製作だからこそ可能な贅沢で高尚なSF世界だった。この作品をゲーム&アニメ世代に見てもらいたいけど、おそらく無理だろうなあ…(「テンポが遅くて眠くなった~。意味わからん」と一蹴されそう)。
SF作品には疎いので、映像や技術は「すごかった!」ぐらいの感想しか言えないのですが、役者の演技も見どころがたくさんあった。
 ライアン・ゴズリングは悩めるレプリカントにぴったり。
「ラ・ラ・ランド」のゴズリングより100倍味がある演技にしびれました。感情も姿も人間と変わらない。人間になりたいけどなれない。恋もしたいけどバーチャルな恋人しか作れない。そんな鬱屈したKが不憫で不憫で、つい感情移入。
バーチャル恋人役のキューバ人女優アナもキュートでぴったり(彼女は2009年のラテンビート映画祭で来日もしていました。ビッグになりました!)。
そして怖くて強いレプリカントも存在感あり。オランダ人女優とのこと。若かりし頃、ルドガー・ハウアーに熱を上げたことを思い出したりして、しっかりファンサービスしてくれてることにも歓喜。
 ハリソン・フォードはすっかり老いてはいたけど、相変わらず不死身。でも存在感をあえて抑え、脇役に徹していた。Kが素敵すぎるっていうのもありますけどね。
個人的にはジャレット・レトがお気に入りなのでもう少し出番が多ければよかったかな。
 とにもかくにもオールドファンにはたまらないSFアート作品に大満足でした。
見るたびに違う面白さも発見できそう。何回でも見てみたい極上の1本。
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Posted on 2017/11/18 Sat. 12:10 [edit]

category: 映画レビュー

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スコセッシ監督渾身の傑作『沈黙』レビュー。テーマは深く重いが、今だからこそ目をそらしたらいけない。  

沈黙 -サイレンス- SILENCE
監督:マーティン・スコセッシ、撮影:ロドリゴ・プリエト、出演:アンドリュー・ガーフィールド、アダム・ドライヴァー、浅野忠信、窪塚洋介、塚本晋也、イッセー尾形、リーアム・ニーソン


☆17世紀の日本。ポルトガル人宣教師フェレイラが、キリシタン弾圧の拷問に屈して棄教したとの知らせを聞いた弟子のロドリゴとガルペは、真相を確かめるべく日本へと向かう。マカオで出会った日本人キチジローの手引きで長崎の隠れキリシタンの村に潜入した二人は、日本人信者が様々な拷問により、命を落としていく悲劇を目の当たりにする。

戦国時代から江戸初期のキリスト教弾圧は歴史で学んだし、原作も読んではいたのだが、実際に映像となって様々な拷問が再現されると、見るに耐え難いものがある。とくに茂吉の拷問シーンは辛すぎてトラウマになりそうだった。
この映画は日本の小説が原作ではあるのだが、監督は熱心なカトリック信者の欧米人であり、長い間この企画を温めてきた巨匠。しっかりスコセッシの視点が反映されていて、とくに宣教師の心理描写が秀逸だ。
人を救うためのキリスト教布教が、人々を苦しめ死に追いやっている。信仰のために命を投げ出すのは正しい道なのか…。ロドリゴは日本人の拷問を見せられるたびに苦悶する。
一方、何度も踏絵を受け入れ命拾いしてきたキチジローは、裏切っては戻ってきて、ロドリゴに懺悔する。一見、ずる賢い男にも見えるのだが、キチジローは誰もが内に持っている人間の弱さそのものでもある。マリア像や十字架は、所詮人が作った偶像に過ぎない。唾を吐こうが踏みつけようが、心の中の信仰心は不変、とでも考えているのかもしれないが、それが真の信者と言えるのか…。それでは死んでいった多くの信者たちが浮かばれないのではないか。
 映画を見ている間ずっと、ロドリゴとキチジロー、そして死にゆく信者たち、誰の立場にも立てず、自分自身にも悶々としてしまい、終始息苦しかった。
 宗教弾圧は、300年以上たった今でも行われ、キリスト教とイスラムがいがみ合い、イスラムの自爆テロは激化するばかりだ。
「命を投げ出すことが信仰」という考えには賛成出来ないが、厳しく弾圧されればされるほど、熱心な信者の多くは自爆という行為を繰り返すだろう(もちろんテロは絶対悪だが)。

神は何を望むのか?神はなぜ答えをくれないのか?
宗教とは人を救うものではなく、苦しめるものなのか? 信仰とは何ぞや?

無宗教である自分には到底答えは出せない。それほど重いテーマである。
この映画は、信仰を持っている人と無宗教の人では、感じ方も違ってくるだろう。

スコセッシ監督が長い間、映画化を熱望し、ついに完成したことは、長年監督の作品を追いかけてきた自分として、何よりもうれしい。そして、日本人の隠れキリシタンにもしっかりと光を当ててくれたことに感謝の気持ちで一杯である。

Posted on 2017/02/11 Sat. 11:05 [edit]

category: 映画レビュー

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ギドク監督新作『The NET 網に囚われた男』は“貧しさ=不幸”という価値観にノーを突きつける映画であり、知る権利とは何ぞや?と考えさせるストレートな社会派映画です。  

スコセッシ監督の『沈黙』を見に行く前に、ギドク監督新作『The NET 網に囚われた男』のレビューを書きました。シンプルな映画ではありましたが、今、社会で起こっている様々なことを考えずにいられず、久しぶりにクドクドと書きました。書いても書いても自分の考えの整理はつかず…。

The NET 網に囚われた男 THE NET
監督:キム・ギドク、出演:リュ・スンボム、イ・ウォングン、キム・ヨンミン、イ・ウヌ
☆北朝鮮と韓国の国境付近で暮らすナム・チョルは、漁に出た際、網が絡まりエンジンが故障。漂流先は韓国領内だった。韓国警察に拘束され、スパイ容疑で執拗な取り調べを受けるが、ナムは家族の元へ帰りたいと言い続け、容疑を否定する。

 ギドク監督にしては珍しい正攻法の社会派ドラマ。つい拷問シーンや両国警察の理不尽さに目がいきがちだが「貧しさ=不幸」という価値観にノーを突きつける映画だと感じた。
 米国中西部では、ブルーカラーの白人にトランプ支持者が多いとのことだが、裕福になった移民が目に見え、それに対する嫉妬心が生まれ、自分が不幸なのは移民のせい、という自己中心的な理論によって、移民排斥の気運が高まっていると感じる。
隣に住んでる自分と肌の色が違う人や宗教の違う人が、潤っているのが目に見えれば、比較してしまうのは無理もないこと。逆に北朝鮮のように、鎖国をして遮断してしまえば、ナムのように「幸せ」は感じられるのだろう。ただ、それは真の幸せなのだろうか。
 「貧しさ=不幸」ではない一方で、人には知る権利もある。外の世界を知りたいと思う人が抑圧された社会は悪だ。ナムは「韓国のことを知りたくない」といって目を閉じるが、それは「知ったら北に戻ったときに痛い目にあう」という恐れから出た行動だった。もちろん、知りたくない人が「耳を塞ぐ権利」も存在はするのだが、好奇心は人のサガであり、一度知ってしまったら、それはパンドラの箱になり、二度と閉じることはできない。
 映画「ミッション」は、南米の先住民への布教が結果的に先住民を滅ぼしてしまう悲劇を描いていたが、ナムに起こった不幸もそれと通じるものがあると感じた。
 毎度毎度、過激な描写で観客を驚かせてきたギドク監督だが、この映画ではストレートに、政治に翻弄された男の姿を描いた。いつものノリを期待した観客は戸惑ったかもしれないが、ギドクはいい意味で観客を裏切ってくれた。ギドクワールドの新世界にも期待したい。

Posted on 2017/02/03 Fri. 11:00 [edit]

category: 映画レビュー

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グザヴィエ・ドラン監督の「Mommy/マミー」レビュー。恐るべき若き天才ドランの世界を十二分に堪能!  


☆☆問題行動の多い17歳の青年スティーブが施設で放火騒ぎを起こした。スティーブは母親ダイアンに引き取られ、二人での生活を再スタートする。生活費を稼ぐために働きに出たダイアンは、留守の間に、休職中の元教師カイラに息子の家庭教師を依頼する。
 エキセントリックな母と感受性が異常に強い息子、そして言葉をうまく発せられなくなった元教師。三者三様のはみだし者が、思いっきり不器用に、三人なりの絆を築いていく人間愛を描いている。
母と息子の怒鳴り合いは、見ていて心が痛むこともあったが、感情のぶつけ合いはけっして悪いことじゃないんだ、と思わせてくれる清々しさがあった。
愛すべき三人を、何も言わずに、ぎゅっと抱きしめたくなったのは、私だけではないはず。
異端だっていいじゃない。ちょっとハタ迷惑だったりもするけど、それも含めて人間らしさってこと。
この映画を見て、眉間にしわを寄せてしまうような“常識人”(映画の中でいえば母に色目を使う弁護士タイプ)も社会には大勢いる。
彼らの反応は、ある意味正しい。
でも、人の心はそう単純じゃない。正しいか正しくないかだけでは測れないものだ。
母と息子、そして元教師、&この映画に感動できた自分の、これからの人生にエールを送りたくなりました。

今作でもっとも印象に残った映像は、停電中の真っ暗な闇の中に浮かび上がるスティーブとカイラの顔。
表情をあえて見せない映像テクを絶妙に使い、見る側の想像力を掻き立ててくれる。
そしてもちろん音楽の使い方もGood!
正方形の画面も面白かったし、カラオケのシーンもよかったなあ…。
毎度のことですが、この感動をうまく言葉で表現できないもどかしさ…。
若き天才ドランのファンになってよかった、と心から思える作品でした!

Mommy/マミー
グザヴィエ・ドラン監督、アンヌ・ドルヴァル、スザンヌ・クレマン、アントワーヌ・オリヴィエ・ピロン出演

Posted on 2015/04/30 Thu. 10:08 [edit]

category: 映画レビュー

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「Mommy/マミー」4/25日本公開!グザヴィエ・ドラン監督に夢中です  


初めて見たグザヴィエ・ドラン作品は『わたしはロランス』。
男から女になることを決めた男と、彼を愛する女の苦悩。
別れと再会を繰り返す二人の数年間を追いながら、二人の成長と絆を描いているのだが、キャラクター、存在感、俳優の演技が秀逸で、あっという間に心を奪われてしまったのを覚えている。
ドラン映画の魅力は、キャラや演技、ドラマ展開にプラスされた個性的な映像センスにある。
カラフルでポップな幻想的映像や、雑誌から飛び出てきたような洒落たファッション、左右対称の構図、キャラクターたちの独白等々、随所に工夫が見られ、それらが巧みに挿入されているので、長いドラマでも飽きさせない。
ルックス重視の女子でも、アート志向の強い美大生タイプでも、ロマンチックドラマを好むOLタイプでも楽しめる。
様々な角度から、何度でも楽しめるドラン映画。
ドランの魅力は言葉で語るよりも、見てもらうのが一番。
新作『Mommy/マミー』への期待も膨らむばかりです!


主な作品:
エレファントソング(2014) 出演 シャルル・ビナメ監督作品
Mommy/マミー(2014) 監督
トム・アット・ザ・ファーム (2013) 監督・出演
私はロランス(2012) 監督
胸騒ぎの恋人(2010) 監督・出演
マイ・マザー(2009)監督・出演

主な受賞歴:
第70回ベネチア国際映画祭:国際批評家連盟賞受賞「トム・アット・ザ・ファーム」
第65回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門:最優秀女優賞受賞(スザンヌ・クレマン)「私はロランス」
第63回カンヌ国際映画祭ある視点部門:若者の視点賞受賞「胸騒ぎの恋人」
第62回カンヌ国際映画祭・監督週間部門:若者の視点賞受賞「マイ・マザー」

Posted on 2015/04/13 Mon. 13:39 [edit]

category: 映画レビュー

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